月末になると、エンジニアから客先指定の作業報告書を回収し、自社の勤怠と突き合わせ、精算幅から請求額を計算し、給与計算にも反映する——。
SES・客先常駐の企業では、1人のエンジニアについて「勤怠」「稼働時間」「請求」「採算」を別々に管理しているケースが少なくありません。
本記事では、SES企業の勤怠管理が難しくなる理由を整理し、精算幅の計算例や偽装請負を避けるための注意点、案件別の採算管理までを解説します。
SES企業の勤怠管理が難しい4つの理由
| 理由 | 現場で起きること | 影響 |
|---|---|---|
| 客先ごとにルールが違う | 始業時刻、休日カレンダー、休憩時間が常駐先ごとに異なる | 勤務パターンの設定・集計が複雑になる |
| 二重管理 | 客先指定の作業報告書と自社の勤怠システムに二重入力 | 入力負担、数字の不一致、回収の遅れ |
| 精算幅に基づく請求 | 稼働時間が精算幅の上限・下限を超えると請求額が変わる | 月末に稼働が確定するまで請求額が決まらない |
| 採算が見えにくい | 単価と人件費、待機期間のコストが別管理えで時季を指定して取得させる | 赤字・低採算の案件やエンジニア配置に気づけない |
精算幅の計算例
準委任契約のSESでは、月額単価に対して「140〜180時間」などの精算幅を設け、稼働時間が下限を下回ると控除、上限を超えると超過分を請求する契約が一般的です。
以下は上下割(控除単価=単価÷下限時間、超過単価=単価÷上限時間、10円未満切り捨て)の例です。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 月額単価 | 600,000円 |
| 精算幅 | 140〜180時間 |
| 控除単価(600,000÷140) | 4,280円/時間 |
| 超過単価(600,000÷180) | 3,330円/時間 |
| 稼働時間 | 計算 | 請求額 |
|---|---|---|
| 130時間(下限を10時間下回る) | 600,000円 − 4,280円×10時間 | 557,200円 |
| 160時間(精算幅内) | 精算なし | 600,000円 |
| 190時間(上限を10時間超える) | 600,000円 + 3,330円×10時間 | 633,300円 |
精算方法には、中間値(例:600,000÷160時間)で控除・超過単価を統一する「中間割」もあります。
端数処理や、稼働時間を15分単位などで丸めるかどうかは契約ごとに異なるため、案件ごとの契約条件を正確にマスタ化しておくことが、請求ミスを防ぐ前提になります。
「勤怠」と「稼働時間」は同じではない
| 観点 | 勤怠(自社の労務管理) | 稼働時間(客先への精算) |
|---|---|---|
| 目的 | 労働時間の把握、給与計算、36協定の管理 | 契約に基づく請求額の算定 |
| 管理責任 | 雇用主である自社 | 契約条件に基づき客先と確認 |
| ずれる例 | 帰社日の社内業務、移動、社内研修 | 客先作業のみを計上する契約の場合 |
客先の稼働時間だけを見ていると、帰社日や社内業務を含めた総労働時間が把握できず、残業時間や36協定の上限管理に漏れが生じます。勤怠(総労働時間)と稼働時間(案件別)を分けて記録し、両者を突き合わせられる状態にすることが重要です。
偽装請負を避けるための注意点
準委任契約や請負契約で客先に常駐する場合、客先の担当者がエンジニアに直接業務の指示や労働時間の管理(残業の指示、勤怠の承認など)を行うと、実態として労働者派遣とみなされ、偽装請負と判断されるおそれがあります。
- 残業・休日出勤の指示や承認は、自社の責任者を通じて行う
- 客先には「作業実績(稼働時間)の報告・確認」を行い、勤怠の管理は自社で行う
- 客先からの依頼は、自社のリーダーや責任者を窓口として受ける運用にする
- 契約形態ごとの判断に迷う場合は、社会保険労務士や弁護士に確認する
作業報告書と勤怠の二重入力、精算計算、案件別採算の把握をバラバラに行っている場合は、勤怠と工数・売上を一つのデータでつなぐことで、月末業務と経営判断の両方が変わります。
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エンジニア別・案件別の採算を見る
| エンジニア | 単価 | 稼働 | 請求額 | 人件費(給与・社保等) | 粗利 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 60万円 | 160時間 | 60.0万円 | 42万円 | 18.0万円 |
| B | 55万円 | 190時間 | 58.1万円 | 40万円+残業代 | 残業代次第で縮小 |
| C | 待機 | — | 0円 | 38万円 | ▲38万円 |
上の例のように、精算で請求額が増えても、残業代の増加で粗利が縮小することがあります。
また、待機(ベンチ)期間のコストは案件の外で発生するため、案件単位の数字だけでは会社全体の採算は見えません。勤怠データ(労働時間・残業代)と案件データ(単価・精算)を結びつけて見ることで、単価交渉、配置、採用の判断材料になります。
SES企業の勤怠管理を仕組み化するポイント
- 常駐先ごとの勤務時間・休日カレンダーを勤務パターンとして登録する
- 日々の勤怠入力と同時に、案件別の稼働時間(工数)を記録し二重入力をなくす
- 案件ごとの単価・精算幅・端数処理を契約マスタとして管理する
- 月途中で精算幅の下限割れ・上限超えが見込まれるエンジニアを把握し、営業が早めに客先と調整する
- 勤怠・工数・請求・人件費を案件別、エンジニア別に集計する
まとめ
SES企業の勤怠管理は、「労務管理」「請求」「採算管理」が1人のエンジニアのデータに集約される点に難しさがあります。
勤怠と稼働時間を区別して記録し、契約条件をマスタ化し、月途中から精算幅の超過・不足を把握できれば、月末の手作業が減るだけでなく、案件ごとの利益を守る判断が早くなります。
iTimeでできること
iTimeで勤怠を、iTimeValueで工数・売上・経費などを組み合わせることで、エンジニアの労働時間と案件ごとの採算を一貫して把握する考え方を支援します。『何時間働いたか』だけでなく『その時間がどれだけの利益を生んだか』を、SES経営の判断に活かせる状態を目指します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度・法令の具体的な適用については、厚生労働省等の最新の公的資料や社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
SES・客先常駐の管理業務を見直したい方へ
作業報告書の回収、精算計算、勤怠との突き合わせ、案件別の採算把握に時間がかかっている場合は、現在の運用を伺ったうえで、iTime・iTimeValueでどこまで一元化できるかをご提案します。
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