工数管理とは、業務や案件ごとに「誰が、何に、何時間使ったか」を記録し、原価や生産性を把握する管理手法です。勤怠管理が「何時間働いたか」を扱うのに対して、工数管理は「その時間を何に使ったか」を扱います。
同じ8時間の勤務でも、中身が「A社の案件に5時間、社内会議に2時間、問い合わせ対応に1時間」と分かれば、どの案件にいくらの人件費がかかっているかが見えます。工数管理の目的は、この「時間の使い道」を経営の判断材料に変えることです。 この記事では、工数の数え方から、始め方の手順、ツールを選ぶときの確認点までをまとめています。
工数とは何か|人時・人日・人月の数え方
工数とは、ある作業を終わらせるために必要な「人数 × 時間」の量です。計算式は次のとおりです。
たとえば3人で4日かかる作業は12人日です。同じ12人日は、6人なら2日、2人なら6日という読み替えもできます。工数は人数と期間を掛け合わせた総量なので、人数を増やせば期間は短くなる、という前提で見積に使われます。
工数には3つの単位があり、扱う仕事の長さによって使い分けます。
| 単位 | 意味 | よく使われる換算 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 人時 (にんじ) | 1人が1時間でできる作業量 | – | 1日以内で終わる作業。 問い合わせ対応、修正作業など |
| 人日 (にんにち) | 1人が1日でできる作業量 | 1人日 = 8時間 とするのが一般的 | 数日から数週間の案件。 制作、現場作業など |
| 人月 (にんげつ) | 1人が1か月でできる作業量 | 1人月 = 20人日(160時間) とする会社が多い | 数か月の案件。 システム開発、長期の受託など |
注意が必要なのは人月です。1人月を何日として数えるかは法律で決まっておらず、その月の営業日数をそのまま使う会社も、20日に固定する会社もあります。社外と見積をやり取りする前に、自社では1人月を何日・何時間として扱うのかを決めておいてください。ここが曖昧なまま「3人月で対応します」と伝えると、相手と自社で想定している時間量がずれます。 「人工(にんく)」という言い方もあり、建設業などでは人日とほぼ同じ意味で使われます。
勤怠管理と工数管理の違い
工数管理は勤怠管理と混同されやすいので、先に違いを整理します。
| 勤怠管理 | 工数管理 | |
|---|---|---|
| 記録する内容 | 出退勤、休憩、残業、休暇 | 案件・業務ごとの作業時間 |
| 主な目的 | 労働時間の把握、給与計算、法令対応 | 原価管理、生産性の把握、見積精度の改善 |
| 主に使う人 | 人事・総務、管理職 | 経営者、プロジェクト責任者、部門長 |
| 足りないと起きること | 労務リスク、集計の手間 | 案件が赤字に終わってから気づく |
この2つは別々に管理されがちですが、片方だけでは判断に使えません。勤怠だけでは案件の採算が分からず、工数だけでは入力漏れがあっても気づけません。両方を突き合わせられる状態にして、初めて記録したデータが使えるようになります。詳しくは「勤怠と工数を一元管理するメリット」で解説しています。
工数管理で分かる4つのこと
工数を記録すると、それまで見えなかった次の4つが数字になります。
| 分かること | 具体例 | 次に取れる打ち手 |
|---|---|---|
| 案件ごとの採算 | A案件は売上1,000万円で2,000時間、 B案件は売上800万円で800時間 | 1時間あたりの売上が低い案件の進め方・受け方を見直す |
| 見積と実績の差 | 見積150時間の案件で、 設計だけに120時間かかっている | 進行中に体制を変える、追加費用を相談する |
| 間接業務の割合 | 全体の2割が社内会議と 資料作成に使われている | 会議の頻度・参加者・資料の様式を見直す |
| 業務の偏り | 特定の社員に案件が集中し、 残業が続いている | 業務配分の調整、手順の文書化で属人化を解消する |
工数を金額に換算する方法
工数管理が経営の話になるのは、時間を金額に換算したときです。計算は2段階です。 まず1時間あたりの人件費を出します。もっとも正確なのは、賞与や会社負担の社会保険料を含めた人件費の総額を、総労働時間で割る方法です。概算でよければ、月給に会社負担分を加えた金額を、月の所定労働時間で割ります。
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 1人あたりの月のコストを出す | 月給30万円 + 会社負担の社会保険料・賞与の月割など | 仮に40万円 |
| 1時間あたりの人件費を出す | 40万円 ÷ 月の所定労働時間160時間 | 2,500円/時間 |
| 案件にかかった人件費を出す | 実績300時間 × 2,500円 | 75万円 |
| 案件の粗利を出す | 売上150万円 ― 人件費75万円 | 75万円(外注費・経費を引く前) |
会社負担の社会保険料は給与額や加入している制度によって変わり、賞与や退職金の積立を含めるかどうかでも金額が動きます。上の40万円はあくまで計算の進め方を示すための数字です。自社の単価は、決算の人件費総額を総労働時間で割って算出してください。
この単価が分かると、見積と実績の差も金額で言えるようになります。見積150時間の案件が実績200時間になれば、差は50時間、金額では12万5,000円です。「なんとなく赤字っぽい」が「12万5,000円の超過」に変わります。これが工数管理を入れる最大の効果です。
工数管理の目的は「記録」ではなく「判断」
工数管理が失敗する典型は、入力を厳密にすることが目的になってしまうことです。細かく記録させても、その数字を見て何も決めないのであれば、現場の入力負担が増えるだけで終わります。
始める前に「この数字を見て、誰が、何を決めるのか」を先に決めてください。たとえば「毎週月曜に部門長が、見積の7割を超えた案件だけを確認する」と決めておけば、必要な記録の細かさも自然に決まります。逆にここを決めずに始めると、分類だけが増えて誰も見ない表ができあがります。
工数管理の始め方|5つのステップ
| SETP | やること | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 1 | 分析したい単位を決める(案件別・顧客別・業務別) | 目的から逆算せず、細かい分類から作ってしまう |
| 2 | 入力ルールを決める(分類・単位・締切) | 分類を20種類などに細分化し、入力が続かなくなる |
| 3 | 日々記録する | 月末にまとめて入力し、記憶に頼った数字になる |
| 4 | 予定と実績を比べる | 集計するだけで、比較まで行わない |
| 5 | 改善につなげる | 数字を出して満足し、打ち手を決めない |
分類は最初から細かくせず、5〜10程度から始めるのが現実的です。入力の単位は0.25時間(15分)刻みが扱いやすく、それより細かくしても精度はほとんど上がらない一方で、入力をやめる理由にはなります。具体的な進め方は「工数管理のやり方5ステップ」で手順ごとに解説しています。
工数管理の3つのやり方と、それぞれの限界
| 方法 | 向いている状況 | 限界がでるところ |
|---|---|---|
| Excel・スプレッドシート | 少人数、案件数が少ない、まず試したい | 入力の回収と集計の負担。勤怠との突き合わせができない |
| 工数管理の専用ツール | プロジェクト管理と一体で運用したい | 勤怠と別管理になり、総労働時間と工数の合計が合わない |
| 勤怠と一体型のシステム | 労務管理と原価管理を両方必要とする | 初期設定に手間がかかり、既存の勤怠ルールとの整理が必要になる |
Excelでどこまでやれるか、どこで限界が来るかは「工数管理をExcelで続ける限界」と「工数管理表はエクセルで十分?」で詳しく扱っています。
見落とされやすいのは2つ目の「勤怠と別管理になる」問題です。勤怠では8時間勤務となっているのに工数の合計が6時間、という差が出たとき、入力漏れなのか実態なのかを確認できません。原価計算の前提が崩れるため、工数データを経営判断に使う段階では、勤怠と突き合わせられることが重要になります。
どの方法が自社に合うかだけでなく、勤怠管理システムそのものを具体的に比較検討したい方は、「勤怠管理システム比較|8項目で自社に合うものを選ぶ方法」もあわせてご覧ください。
工数分析の4つの切り口
記録が溜まったら、次は分析です。切り口を決めずに数字を見ても何も分からないので、次の4つの順で見ていくと判断につながります。
| 切り口 | 見る数字 | 分かること |
|---|---|---|
| 案件別 | 案件ごとの総時間と、売上 ÷ 総時間 | どの案件が時間を食っているか。受けるべき案件の条件 |
| 顧客別 | 顧客ごとの総時間と、売上 ÷ 総時間 | 手間のかかる顧客。値上げや進め方の交渉が必要な相手 |
| 部門 社員別 | 1人あたりの稼働時間と、間接業務の割合 | 業務の偏り。採用すべきか、配分を変えるべきか |
| 業務別 | 工程ごとの時間(設計・制作・修正・会議など) | どの工程が想定より重いか。見積の作り方を直す箇所 |
はじめは案件別から見てください。「忙しいのに利益が残らない」の原因は、ほとんどの場合、特定の案件か特定の工程に集まっています。分析の具体的な手順は「工数管理で生産性を上げる4つの分析方法」で解説しています。
工数管理が特に効く業種
人件費が原価の大半を占め、案件ごとに採算が変わる業種ほど効果が出ます。システム開発・受託開発、建設・リフォーム、映像や広告などの制作会社、コンサルティング、士業などが代表例です。
逆に、同じ作業を繰り返す業態では、案件別ではなく業務別の記録のほうが向いています。自社が当てはまるかどうかは「工数管理が必要な業種10選」で業種ごとに整理しています。
よくある失敗3つ
- 分類を細かくしすぎる:入力が続かず、3か月で形骸化します。迷ったら少ないほうから始めてください
- 月末にまとめて入力する:記憶に頼るため数字が実態とずれ、判断に使えません。日次か、せめて週次で記録します
- 集計して終わる:数字を見ても打ち手を決めないため、現場に「何のために入力しているのか」が伝わらず、入力の質が落ちます
まとめ
工数管理とは、時間の使い道を記録して、経営の判断材料に変える仕組みです。工数は「人数 × 期間」で数え、人時・人日・人月を仕事の長さで使い分けます。1人月を何日として扱うかは社内で決めておいてください。
大切なのは入力の細かさではなく、記録した数字を見て誰が何を決めるかを先に決めておくことです。まずは5〜10程度の分類で始め、予定と実績を比べるところまで回してみてください。そのうえで勤怠と突き合わせられる状態にすると、案件ごとの採算まで金額で見えるようになります。
iTimeでできること
iTimeで勤怠を、iTimeVALUEで工数・売上・経費を扱うことで、働いた時間とその使い道、案件ごとの採算までを一つのデータで把握できます。勤怠と工数を同じシステムで記録するため、総労働時間と工数の合計が合わないという問題が起きません。入力の単位や分類の決め方は、業種や案件の形に合わせてご相談いただけます。
工数管理をこれから始める方へ
工数管理とは、時間の使い道を記録して、経営の判断材料に変える仕組みです。工数は「人数 × 期間」で数え、人時・人日・人月を仕事の長さで使い分けます。1人月を何日として扱うかは社内で決めておいてください。
大切なのは入力の細かさではなく、記録した数字を見て誰が何を決めるかを先に決めておくことです。まずは5〜10程度の分類で始め、予定と実績を比べるところまで回してみてください。そのうえで勤怠と突き合わせられる状態にすると、案件ごとの採算まで金額で見えるようになります。
自社の工数管理、何から始めればいいか相談したい方へ
分類の決め方や入力の単位など、自社の案件の形に合わせた始め方をご案内します。勤怠と工数を一体で管理したい場合の進め方も、具体的にお答えします。
平日9:00〜17:45 / オンラインでのデモにも対応しています
勤怠管理と工数管理を一体化する「iTime」
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度・法令の具体的な適用については、最新の公的資料や専門家にご確認ください。
